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2016.10.18

郷愁の秋!ほっと心が安らぐ老舗酒場巡礼の聖地へ

郷愁の秋!ほっと心が安らぐ老舗酒場巡礼の聖地へ

めまぐるしく進化する東京の中で、昭和の時代から時がとまったかのように、往時の面影を色濃く残す大衆酒場。酒場巡礼の聖地とも呼ばれる一之江の『カネス』で、その醍醐味を味わった。

昭和7年、江戸川区とともに産声をあげた

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都営地下鉄新宿線の一之江駅からバス通りを10分歩いていると、昔ながらの八百屋を過ぎた先に突如現れる紺地の「大衆酒場」と赤地の「中華そば」の二つ並んでかけられた暖簾。ここ『カネス』は東東京、いや東京随一の長い歴史を誇る大衆酒場だ。

すりガラスの引き戸をガラガラと開けると、懐かしい光景が目に飛び込んできた。一本3メートル程度の板が左右に二本奥に伸び、入り口手前の2メートル弱の板がそれをつないでいるコの字形カウンターだ。中央の空間の奥には大鍋と椅子がぽつねんと佇んでいる。

「昔はこの前にトロリーバスが走っていたそうなんですよ」

まず瓶ビールで喉を潤しながら、壁に掲げられたセピア色の写真を眺めていると、二代目女将の浅野頼子さんが話しかけてくれた。

「茅葺屋根の写真は、東京オリンピックの年の昭和39年。その翌年に建て替えたんです」

『カネス』の歴史は戦前の昭和7年、江戸川区が誕生した年に始まる。当初は駄菓子屋としてスタートし、昭和10年代に酒の量り売り兼飲食店に鞍替えした。戦前は野菜も酒も配給制で、店の営業は17時から。配給されるお酒の量も種類も決められていたので、3日に1日ぐらいしか開けられず、開店前にはお酒と交換する券を持った100人のお客が行列をなしていたという。

現在は二代目の女将と料理を担当する夫の彰彦さんの二人で切り盛りしている。

肉の旨味が凝縮した煮込みの深い味わい

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「話ばっか聞いてないでさぁ、煮込み食べてみなよ」。開店とほぼ同時に入ってきた常連客から声がかかった。60年程前に始めて以来の名物だという。

「うちは余計なものは入れずに馬のモツと牛のフワ(肺)だけ」といって女将さんがよそってくれた潔いほど茶一色の煮込みは、まさにトロットロの食感。以前は佐渡の赤味噌を使っていたが、今は千葉の二種類の味噌で仕立てているとか。「一人で何杯も食べたり、昔はどんぶりで出してっていうお客さんもいてねぇ(笑)」。肉の旨味が凝縮された味は、そんな逸話も納得できるほど深く心に響く。

グラスが空になったところで二杯目は焼酎ハイボール。焼酎を炭酸で割り、レモンを浮かべた一杯には氷が入っていない。一口飲むと微かに広がる甘みが独特だが、聞けば生のレモンや砂糖で自家製のエキスを作って割っているとか。シンプルなメニューもさりげなくこだわる老舗の本懐が垣間見えた。

ここにしかない空間が大衆酒場の醍醐味

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一人で静かに飲んでいたお客さんが、会計後、大女将に話しかけた。

「30年ぶりに来たんです。覚えてないと思いますが、ご健在で感激しました」

「遠くにいたからわからなかったよ。太ったんじゃない?」

卒寿を超えてもなお、お客さんの顔を覚えている大女将の記憶力に驚かされるが、それは「何度ももうやめようと思ったけど続けてこれたのは、お客さんたちのおかげ。みんなと話している時が一番楽しいね」という変わらない想いを胸に生きているからだ。

21時を過ぎた頃からお客さんがポツリポツリと帰り始め、暖簾をしまったのは22時過ぎだった。

ここには手のこんだ料理はない。学校や会社でもないから来る義務もない。でも、その日その場にしかない時間が、泡とともに消える会話が、そして変わらない情景がここにある。

数え切れないほど多くの人と酒が交差し、過ぎ去り、また出会う『カネス』は、忘れがたき日本の大衆酒場文化そのものだ。

『大衆酒場カネス』

『大衆酒場カネス』

住所/東京都江戸川区一之江6-19-6 TEL/03-3651-0884 営業/16:30~22:00、日・祝日12:00~22:00 休み/水曜

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